脂漏性皮膚炎
(しろうせいひふえん)

何らかの原因で皮脂の分泌や皮膚の代謝異常が起き、皮膚が皮脂でベタベタする、皮膚が乾燥してフケが多くなる状態が脂漏症(しろうしょう)である。脂漏症によって引きおこされた皮膚炎のことを脂漏性皮膚炎と呼ぶ。

脂漏性皮膚炎の症状

症状によって、乾燥性(皮膚が乾燥し、フケが異常に増加するタイプ)と油性(皮脂でベタベタするタイプ)がある。共通する症状は、鱗屑(フケ)と独特の臭い(脂漏臭)で、脱毛、痂皮(カサブタ)、痒み、炎症である。

症状は、加齢に伴って徐々に悪化していく傾向にあるが、アトピーを併発している場合は1~3歳の若齢から、ホルモン疾患を併発している場合は高齢期から発症している症例もある。

散歩中や触れ合っている中で、フケがいつもより目立ってきた、いつもよりも臭いがする場合は脂漏性皮膚炎の可能性がある。

脂漏性皮膚炎の原因

原因不明(特発性)と基礎疾患が原因となる場合がある。

原因不明だが、通常3週間かけて皮膚の表皮表層の細胞にケラチンが生成・沈着するのだが、皮膚の角化と脂腺の代謝が3~7日と非常に早く起こってしまう。

基礎疾患が原因の場合、アレルギー性(食物アレルギー・アトピーなど)、皮膚糸状菌症、甲状腺機能低下症、副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)、性ホルモン分泌異常、栄養障害、外部寄生虫症(おもにニキビダニ)などがあげられる。基礎疾患により慢性角化異常および皮脂腺の分泌機能変化が起き、皮膚に常在するブドウ球菌やマラセチア(真菌(カビ)の一種)が異常に増えて皮膚炎をおこし更に症状を悪化させる。

また、シーズー、バセットハウンド、コッカー・スパニエル、パグ、ウエスティー( ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア)、ゴールデン・レトリバーミニチュア・ピンシャー、ドーベルマン、チャイニーズシャーペー、ミニチュア・シュナウザー柴犬が脂漏性皮膚炎をおこしやすい犬種であるが、特にシーズーで多くみられる。

脂質、ビタミン(ビタミンAなど)・ミネラル(銅・亜鉛など)が偏っているフードが原因となる場合もある。

脂漏性皮膚炎の治療法

基礎疾患や原因がはっきりしている場合は、まずは基礎疾患の治療や原因を取り除く治療を行う。基礎疾患が慢性疾患の場合は生涯にわたって治療が必要になる。
特発性の場合は、皮膚の状態をコントロールする治療を行う。完治は難しく、生涯にわたり治療が必要になることが多い。

皮膚の状態をコントロールする治療は抗菌剤や殺菌効果や角質溶解効果の強いシャンプーを用いる。軽度であれば改善することもあるが、重症化するとシャンプーの翌日でもフケ・臭い・ベタつき・痒みが目立つようになる。

治療開始後は、週に2~3回のシャンプー療法と、抗菌剤や抗炎症剤の内服薬で症状を抑える。症状がある程度改善したら、シャンプー等によるスキンケアで皮膚の状態を維持することが多い。しかし、体調や季節によって症状が突然悪化することも多いため、定期的な受診を受け、皮膚の状態をチェックする必要がある。また、シャンプー等による治療は皮膚の状態や症状に合わせて使用するシャンプー等を使い分けることや回数の増減を行うことが重要なため、獣医師の指示や指導の下で行うことが望ましい。自宅でのシャンプーが難しい場合は、動物病院併設のトリミングサロン等で薬浴(薬用・医薬品シャンプー等を用いて、皮膚炎等の治療をおこなうこと)を行うことができる。

脂漏性皮膚炎の治療費について

基礎疾患の有無や状態によって様々であるが、生涯にわたって治療が必要になるケースが多いため、高額になると考えて良い。

例としては、炎症を抑える薬や抗生剤は小型犬で3,000〜10,000円/月、使用するシャンプーは1本(200〜250ml)1,500〜3,000円程度、トリミングを利用する場合は、小型犬でシャンプーのみで2,000〜3,000円(薬浴は1,000〜1,500円程度の追加料金が発生する)、カットも行うと5,000円程度の費用がかかる。シャンプーの回数は症状や皮膚の状態によって増減する。症状が軽度の場合は月1回程度でも良いが、重症の場合は最低でも週1回のシャンプーが必要になる

その他、基礎疾患の治療費用が別途必要になる。

脂漏性皮膚炎の予防法

栄養バランスの良い食事をあたえる。

定期的にシャンプーを行い、皮脂・フケ・増殖した細菌やマラセチアを除去し、皮膚のコンデションを整えることが重要である。

また、被毛によるムレを防止するため、気温が上昇する夏場などは被毛を短くする、皮膚のシワが多い犬種はシワの部分を常に清潔にするなどのケアも有効である。

愛犬との外出後は、タオルでのふき取り、ブラッシング、室内のベッドやマットに抗菌スプレーをし、清潔な飼育環境を保つ日常生活のなかでも実施可能なケアだ。また、外耳炎にもかかりやすいため耳の手入れも定期的に行うこと。

愛犬のフケがいつもより多いと感じたら、かかりつけの病院でチェックをしてもらうことをお勧めする。

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