角膜損傷・角膜潰瘍
(かくまくそんしょう・かくまくかいよう)

角膜損傷は、眼の表面を覆っている角膜に傷ができる病気である。眼をぶつけたり、眼に異物が入ることで角膜に損傷を起こす。

また、角膜が傷つくと傷の周囲が角膜損傷が悪化し角膜の傷が深くなると角膜潰瘍に進行する。細菌やウイルスにより角膜が融解し、角膜潰瘍を起こすこともある。角膜潰瘍はできるだけ早い処置が必要になる。悪化すると角膜穿孔(角膜に穴があいてしまうこと)になり、失明することがある。

角膜損傷・角膜潰瘍の症状

眼の激しい痛みが特徴である。痛みのため、まばたきが多くなる(瞬目)、肢で眼をこする、眼を床や壁にこすりつけようとする等の症状を起こす。そのほか、涙が多くなる(流涙)結膜の充血、目やにが増える、角膜損傷部が白くにごる(角膜浮腫)、損傷部周囲に新生血管(パンヌス)がみられる等の症状があらわれる。

角膜はタマネギの皮のような層状の構造であり、表層から角膜上皮、角膜実質、デスメ膜、角膜内皮で構成されている。

角膜潰瘍は表在性(表層の角膜上皮が部分的に欠損した状態:びらん)と深部性(深部の角膜実質が欠損した状態)、また複合型(角膜実質が細菌感染や、角膜上皮や実質細胞、炎症細胞、細菌などが産生する分解酵素で融解することによって治癒過程が複雑化した状態)、難治性角膜潰瘍に分類される。

また、潰瘍が角膜実質より深部のデスメ膜におよび、眼内圧によりデスメ膜が突出した状態をデスメ膜瘤と呼ぶ。デスメ膜粒は容易に眼球破裂を起こす緊急性の高い病態である。

難治性角膜潰瘍は、病変は表在性のみであるが、基礎疾患である角膜上皮基底膜病により再生した角膜上皮の実質への接着が阻害されるため、治癒が遅れ臨床経過が長くなる。

角膜損傷・角膜潰瘍の原因

他の犬や猫との喧嘩、異物の混入によって刺激が起こり自身で眼を引っかいて起こす外傷、散歩中の草木との接触が主な原因である。逆さ睫毛、眼瞼内反症によって角膜損傷を起こすことも多い、また、顔面神経異常、ドライアイなどの基礎疾患によるものもある。

基礎疾患があると、感染(ウイルス、細菌、真菌など)により慢性的に角膜炎を起こし、炎症を起こしている病原体により角膜が融解してしまうことがある。

眼球が突出している・眼が大きい犬種(シーズーパグフレンチ・ブルドッグチワワキャバリア等)は眼を傷つけやすいため、他の犬種より発生率が高い。

難治性角膜潰瘍は、ボクサー、プードルゴールデン・レトリバー、フレンチ・ブルドッグに多くみられる。

角膜損傷・角膜潰瘍の治療法

内科的治療、外科的治療を問わず、自分で眼を掻く・床に眼を擦り付けることでの悪化を防止するためエリザベスカラーの装着が必要になる。
角膜損傷・潰瘍の治療の基本は点眼療法である。損傷や潰瘍の程度によって数種類の点眼薬を併用する。主に抗生剤と角膜修復を促進する成分が含有された点眼薬を頻回投与する。
自宅で点眼できない場合は入院治療が必要となる場合もある。
また、コンタクトレンズで眼瞼の刺激や疼痛感を軽減することもある。難治性角膜潰瘍の治療にも効果的で外科手術の代用や補助として用いる。
深部潰瘍やデスメ膜瘤、とく角膜穿孔では緊急手術が必要になる。術式としては角膜縫合術、瞬膜弁被覆術、結膜弁被覆術、眼瞼縫合術などがある。
眼球破裂にまで進行した場合は、視力の回復が望めないため、眼球摘出術や義眼の挿入をおこなうこともある。
また、軽度の角膜潰瘍でも眼瞼やまつげの異常が原因している場合は、異常を取り除くための外科療法が必要となる場合がある。
難治性角膜潰瘍は内科療法に反応が悪いため、接着の緩い上皮を外科的に除去し、格子状角膜切開術や点状角膜切開術などを実施する。

角膜損傷・角膜潰瘍の治療費について

点眼薬は使用する薬剤や動物病院によって幅があるが、5ml入りで1500〜5,000円/本が目安である。
いわゆるフラップ(眼瞼縫合術・結膜弁被覆術等)による手術費用は小型犬・片眼で40,000〜50000円程度が目安であろう。
コンタクトレンズの費用は5,000〜10,000円程度が目安である。
角膜縫合術では高度な技術や設備が必要になるためさらに高額になる。小型犬・片眼で100,000円以上は必要になると考えて良い。入院費用、術後ケアも含めるとさらに高額になると予想される。
眼の病気の診断や治療には、かなりの専門技術と医療機器が必要となるため、どこまでの検査や治療ができるかを見極めて、動物病院でよく相談した上で治療法を選択すると良い。

角膜損傷・角膜潰瘍の予防法

眼球が突出している犬種は散歩や運動時に眼を傷つけないよう注意すること。また、多頭で 飼育している・猫と同居している場合は喧嘩による損傷にも注意が必要である。
飼い主が気付かないうちにすでに角膜が傷ついていることも少なくないため、眼の異常がみられたら直ぐに動物病院を受診すること。

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