椎間板ヘルニア

椎間板ヘルニアとは、急激な運動・肥満などにより、著しく椎間板への負担が大きくなったときに、椎間板が損傷して起こる病気である。
椎間板ヘルニアは、全犬種で発生する病気だが、骨異栄養症性犬種(ミニチュア・ダックスフンドウェルシュコーギーフレンチ・ブルドッグ、ペキニーズ、プードルシーズーパグビーグル等)と呼ばれる犬種に特に多くみられる。主に老齢期で多くみられるが、骨異栄養症性犬種では若齢期(2~7歳頃)から発症することも多い。そもそもヘルニアとは、臓器(組織)の一部またはすべてが、体内にある裂け目やすき間から脱出する状態をいい、それによって正常な側の臓器や組織が圧迫を受けて機能障害を起こしたり、体の外に脱出してしまう病気のことである。

椎間板ヘルニアの症状

椎間板ヘルニアは発症部位によって頚部(首の骨)椎間板ヘルニアと胸腰椎(胸と骨)ヘルニアに分類される。
頚部椎間板ヘルニアは犬の椎間板疾患の15〜20%程度の発生率を占めるとされている。
軽度であれば、硬直した歩き方、頭を動かすのを嫌う、頭を低く構える等が主な症状であるが、重症になると激しい疼痛や四肢の麻痺を引き起こす場合もある。

胸腰椎ヘルニアは重症度によって5つのグレードに分けられる。

グレード1 
脊椎(背骨)に痛みを感じ、運動を嫌うようになる。抱きかかえた時に痛みを訴えて鳴くことがある。神経の麻痺は無い。

グレード2 
不全麻痺(麻痺の程度が軽く、脱力はあっても ある程度動かすことができる状態)、運動失調が見られる。歩行可能だが、後ろ足の力が弱くなり、ふらつきや、足を引きずるといった症状(跛行)が現れる。

グレード3 
麻痺、後ろ足を動かすことができなくなる。グレード3以上の症状は基本的には歩行不可能になる。よって、基本的には麻痺をした状態はすべて、グレード3以上に分類されると考える必要がある。グレード3では、意識的に足を動かすことはできることがあるが、負重をかけた歩行はできなくなる。また、足先をつねったりすると痛みを主張することができる。

グレード4 
麻痺、足先の感覚が低下し、痛みに対する感覚(浅部痛覚)が著しく低下する。また、自力での排尿をすることができなくなり、膀胱内に尿が大量にたまってしまうようになる。

グレード5
麻痺、痛みに対する感覚(深部痛覚)が消失する。痛みを感じなくなる。

椎間板ヘルニアの原因

原因は、背骨(脊椎)の間にある椎間板が損傷することによって発症する。椎間板は中心部にある髄核というゼリー状の構造とその周囲にある線維輪で成り立っており、脊椎にかかる衝撃を和らげる働きをしている。

椎間板に強い力が加わったり、加齢による変性により椎間板(髄核や繊維輪)が飛び出し、脊髄や脊髄からでる神経を圧迫することで麻痺や痛みを引きおこす。
椎間板ヘルニアは椎間板の障害の内容や原因にもとづき、大きく分けて3タイプに分類される。

(1)ハンセンⅠ型:椎間板髄核の変性・逸脱によって起こる。
軟骨異栄養性犬種で多く発生し、好発年齢は3〜6歳齢、病変部位は胸腰部90%・頸椎10%程度である。大型犬では、非軟骨異栄養性犬種(ジャーマン・シェパード、ラブラドール・レトリバー、ダルメシアン等)でも発生し、好発年齢は6〜8歳齢である。

(2)ハンセンⅡ型:椎間板線維輪突出によって起こる。
非軟骨異栄養性犬種(特にジャーマン・シェパード)、大型犬、高齢犬で多く発生し、主な病変部位は胸腰部である。

(3) 外傷性椎間板ヘルニア:打撃性の障害により椎間板が高速に破壊されることによって起こる。

椎間板ヘルニアの治療法

犬種・年齢・体重・グレードにより治療法・処置は変わるが、グレード1〜3までは内科療法の改善率は85%以上を示すが、グレード4で40%、グレード5では5%以下になってしまう。外科療法の改善率は、グレード1〜4までは90%以上であるが、グレード5では60%まで低下してしまう。グレード5に進行して2日以上経過した場合、回復の可能性は著しく低くなる。また、グレード3や4から急にグレード5まで進行する場合があるため、グレード3以上から手術が適用となることが多い。

内科療法は治療薬剤(NSAIDS(非ステロイド系消炎鎮痛剤)・ステロイド)やその他薬物、レーザーなどを併用することで患部の痛みを抑え、ケージのなかでしばらく安静にさせて運動を控えること(ケージレストという)をおこなう。安静の期間は脱出した椎間板が安定する4〜6週間は必要となる。

内科療法の場合、外科療法に比べると再発率が高い(1/3に再発がみられた)という報告がある。内科的治療後も症状があまり改善しない場合や症状が重度の場合には、外科的治療を行うことになる。

外科療法は原因となっている脱出した椎間板物質を手術により摘出・除去することで治療する。基本的な治療法は「半側椎弓切除」や「椎弓根切除術」など、骨の切断を伴う侵襲性の高いものが主流である。しかし近年は、「経皮的レーザー椎間板減圧術」(PLDD)といった、体への負担が軽くて済む治療法も開発されている。どの治療法にしても万能ではないため、手術に伴うリスクや再発の可能性といった情報を、担当の獣医師から十分得た上で決定することが肝要である。

手術に当たって重要な事は、原因となっている椎間板の場所を特定することである。当然だが、異なる椎間板の場所を手術しても改善はしない。手術の場所を特定するためには、脊髄造影、CT、MRIなどの検査をおこなうことが必要となる。外科的治療後はリハビリを行って、神経の機能回復を図る。リハビリにはさまざまな療法があり、犬の症状によっても異なるため、獣医師と相談しながら行っていくことになる。

椎間板ヘルニアの治療費について

手術費用と手術の場所を特定するための、脊髄造影、CT、MRIなどの検査費用が非常に高額のため、併せて25〜35万、場合によっては50万以上の治療費がかかる。

内科療法を選択した場合でも、内服薬・検査費用の他に長期にわたりリハビリ費用がかかるため、月数万円程度の治療費が数カ月間必要になると考えて良い。また、いずれの治療を行っても改善が思わしくない場合は、車いす(3〜10万円程度)が必要になることもある。

椎間板ヘルニアの予防法

椎間板ヘルニアの好発犬種は、激しい運動はなるべく控えるようにする。

室内の場合は、可能であればコルクマット、じゅうたんなど)を敷く、足裏の被毛を定期的にカットして、床で滑らないようにすると良い。また、脊椎や椎間板へ体重や強い力が加わらないように、普段からソファーなどへの跳び乗り、跳び降り、段差の昇り降りはさせない工夫が必要である。老犬では加齢による骨の変性も起こってくるため特に注意が必要になる。

また、外傷以外では体重管理が重要である。人間同様、体重の増加は背骨や関節の負担になるため、食生活の管理と適切な運動を行い適切な体重管理を行う必要がある。

【ペット保険募集代理店】
合同会社東京六大陸
神奈川県鎌倉市七里ガ浜1-9-18 R1

【代理店の立場】
当社は保険会社の代理店であり当サイト上で保険契約の締結の媒介を行うものです。保険契約締結の代理権および告知受領権は有しておりません。

ページトップへ