現地発「ドイツのペット事情レポート」
第三回 ペット先進国、ドイツのペット保険について。

ドイツのペット事情 3 − ペット先進国、ドイツのペット保険について

ペット保険の歴史

19世紀、家畜のための保険としてスタート。

ペットは家族の一員として迎えられるドイツでは、人間と同じようにペットの保険もまた充実しています。このペット保険、元をたどれば当初は家畜の生命保険であり、疫病や事故災害による家畜の損失をカバーする、畜産農家のための損害保険でした。

1833年にザクセン-テューリンゲン地方で、保険屋のエルンスト・アルベルト・マジウス(Ernst Albert Masius)の傘下で初めての家畜保険が創設されますが長続きせず、1940年にいったんこのサービスは途絶えます。その後の1873年、ドイツでの初めての動物/家畜保険会社としてハノーファー州の家畜保険銀行、現在のウルツェナー(Uelzener)社が設立されました。

1969年。ペットの賠償責任保険、スタート。

家畜保険は先駆けであるスウェーデンや英国などでもペットの事故や病気を保障する個人保険に派生していきますが、ウルツェナー社は1969年にペットの賠償責任保険や事故保険の提供を始めます。しかしながら健康保険の必要性についてはドイツでの認知度は低いままでした。1984年、ドイツ保険監督庁の決定で国外の保険会社の参入が認められ、既に健康保険のサービスを持っていた国外のペット保険会社に対抗する国内の保険商品の必要性が出てきました。そこへ参入したのがドイツの動物保険の先駆けであるこのウルツェナー社で、ドイツ初の犬、猫、馬の健康保険を提供し始めます。そして1990年代に入ると他の保険会社もこの分野へ進出するようになり、今では80社近くがさまざまなペット保険のサービスを提供しています。

その加入方法も保険会社より直接、または代理店、そして最近ではインターネット契約など、さまざまです。とはいえペット保険の先進国であるスウェーデンや英国に比べると、ドイツではペットの健康保険が浸透しているとは言い難いのが実情のようで、ドイツ全体の飼い犬約690万頭と飼い猫約115万頭のうち、健康保険に加入しているのは約5%程だといわれています。

ペット保険の種類

賠償責任保険。加入義務を定める州も。

ペットのための保険には、先述のように大きく分けて賠償責任保険、健康保険があります。賠償責任保険はどちらかといえば飼い主のためのもので、ペットが起こした他人に対する身体損害や財物損傷などを補償します。特に、外に連れ出す機会が多く、また他の犬や人間に損害を与える可能性のある犬の飼い主には加入が推奨されているもので、危険性が高いとされる種類の犬については加入義務を定めている州もあります。保険額は犬種に関わらず、年額40〜60ユーロの間(約5500〜8000円)が一般的です。

馬も入れる!? ペットの健康保険。

一方の健康保険は、ペットが傷害や病気で病院にかかったときの医療費用をカバーするものです。しかしこの健康保険額が高いとの認識がドイツの飼い主の間にはあり、それがペットの健康保険加入率を5%と下げている背景事情だそうです。例えば成犬の場合で月額50〜80ユーロ程(約6500〜1万円強)が一般的で、犬の種類や年齢で値段が変わらないサービスを提供している会社がほとんどですが、なかにはシェパードのような大型犬に比べてミニダックスのような小型犬は20〜30ユーロ安くなるような、犬種で保険額の違いを提供して他社との差別化を計る会社もあります。また手術となった場合の費用だけを保障するという部分的なサービスの手術保険も各社から提供されており、フルカバーの健康保険よりこちらのみに加入する飼い主の方が多いようです。

この保険のサービスの区分けは各社それぞれですが、共通して多いのは、犬や猫専用のコースプランが揃っているところでしょうか。保険会社によっては犬、猫に続いて馬専用のサービスを提供しているところもありますが、これは乗馬を趣味とする人が多いドイツらしいですね。尚、これらの保険はそれぞれのプラン毎に提供され、加入者がニーズに合わせて選び、一つもしくは複数を組み合わせて加入するのが一般的です。

ペットにも旅先の備えは必要です!

海外旅行も、旅行キャンセル保険も。ドイツ人にとってもペットは家族の一員。

旅行好きとして知られるドイツ人は国外にも長期の休暇へよく出かけます。飛行機にペットを乗せて海外旅行へ行く人もいますが、ヨーロッパは陸続きですから車での旅行にもよく出かけます。となると家族の一員であるペットも連れていくのはごく一般的なこと。陸続きとはいえ、国境を越えたらそこは外国ですから、社会事情も法律も違います。飼い主が旅行保険に入るのと同じように、連れていくペットの保険もまた国外でも対応してもらえるものでなければなりません。

この国外での医療費をカバーする保険は全てのペット保険会社から提供されているわけではないので、ペットを旅行に連れていきたい飼い主は契約内容にその旨が含まれているかを確認する必要があります。たいていの保険内容はEU以外の国で起きたケースにも適用されるようですが、通常の旅行保険と同様、一旦は現地で飼い主の立て替え支払となり、その請求書を保険会社に送った後に契約条件に定められた割合で返金手続き、となるようです。またプランによっては医療費のみならず、自宅までの輸送費も上限付きで補償するなどのサービスもあります。各保険の条件によりますが、国外滞在期間もいわゆる短期滞在としてみなされる最長12か月までは対応してくれるサービスがほとんどのようです。尚、ドイツ国外への引っ越しの場合は旅行や短期滞在にはあたらないため、これまでの契約を解約して移住先の国で新たに保険に入り直すことになる点は人間と同じです。

余談ですが、飼い主が加入する旅行キャンセル保険の条件に、突然のペットの病気や怪我などで旅行に出かけなられなくなったケースも補償するものがあります。これはペット保険とは別のものですが、ペットはまさに家族の一員とみる社会事情が垣間見られますね。

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執筆者紹介

川元アキ
ドイツ在住十数年のドイツ語•英語の翻訳ライター。動物の保護施設「ティアハイム」を紹介する番組制作に関わるTVマンのドイツ人夫と暮らす。
若い頃は料理や読書が趣味、とインドア派だったのが、天気がよければサイクリングやハイキングへ、とアウトドア派になったのは、長年のドイツ生活ゆえ。ワインやチーズも好きだけど、やっぱり塩辛と吟醸酒が最高だね!というのが本音。ゆえにドイツの自宅で味噌や納豆も仕込む。持ち前の好奇心で、あらゆる文化や社会のトピックを探して発信中。

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